TORI MODOSHITAI

過去への執着と憧憬を振り返り未来へ繋ぐアーティストNAZEが自身の今を表現した個展

 

NAZEのルーツにあるのはグラフィティカルチャーであり、ローブローアートなどからインスパイアを受け、彼でしか成し得ない毒っ気のある独特のアートを生み出しています。その手法はドローイング、スプレー、コラージュ、廃材による立体オブジェやテキスタイルなど多岐に渡りますが、一貫して自らの感情と奥底にある記憶を作品に昇華させています。

 

今回の『TORI MODOSHITAI』は月極における2度目の個展となります。前回の個展『Scenes of Disparity(隔たりの風景)』では、わかりやすくNAZEという存在そのものを伝えるために、たくさんの作品が展示されましたが、今回は作品1つ1つをより深く鑑賞することを目的として制作が進められました。ゆえに前回よりも整頓された空間がギャラリーに展開されます。

 

作品のテーマは“自らとその周辺に関して”。作家自身の身の回りにあるものや出来事、自身が抱える葛藤や過去への執着と憧憬、同時に未来への道筋を発見するために描かれた作品が展示されます。作品のスタイルはNAZEらしく1点ごとに異なりますが、それらが1つの空間に在ることでうまく作用するように絶妙なバランス感を持って構築されており、作品ごとに、感情を丁寧に落とし込んだそうです。

 

個展のタイトル『TORI MODOSHITAI』に込めた思いについて、作家は次のように語ります。

 

「生活の中で感じた2つの思いをタイトルにしました。1つは、感情の昂りが昔ほどなくなったことによる初期衝動の憧れ、あの燃え上がる気持ちを取り戻したいという思いです。もう1つは飼っている愛鳥がなかなかケージに戻ってくれないので、『鳥、戻したい』という思いがあります。ケージに入れるのは人のエゴかもしれませんが、安全を考慮するとケージにいてくれた方がよいので。キービジュアルのモチーフになったのは、オランダのガレージセールで出会ったアザラシペンギンと手作りのルシファーという人形で、SNSのアイコンにしているものです。これまでもモチーフになったり、展示の一部にしてきた背景があり、古くからNAZEを見守ってきた2人を殴り書きのように描いた作品です」。

 

上記のステートメントにもあるように、NAZEが作品表現において重視しているのは、感情投影と自身の中にある苦楽のバランスです。作家にとって、絵は自身を知り世界と繋がる方法であったため、作品に心を乗せる必要性がありました。また、苦しみの絵を描く際も勢いに乗れば楽しく描ける。逆に描きなれたポップな絵であっても作業化してしまうと苦しみに転じてしまう、といった具合に、絵に向き合う際の精神的なバランス感にも配慮しているそうです。

 

自身の感情の変化に伴い、過去に存在したはずの初期衝動を取り戻すべきか、そうでないのか。今だからこそ見える景色を探すべきなのか。そのように、ある種のターニングポイントを迎えているNAZE。その葛藤や思考の狭間で生まれた作品は、まさにNAZEの今を表現した貴重なものです。そのパワーを体感してください。きっと、感情を揺さぶられるはずです。

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